僕がほんの一瞬だけ“あの戦争”を体験した日──『さとうきび畑の唄』を通して考える、平和と父親像

歴史×学び
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忘れられない、あの日の光景

毎年8月になると、決まって思い出す景色がある。
それは、灼熱の沖縄の地で、スコップを手に壕を掘っていた、あの日のことだ。

あれは約20年前。ドラマ『さとうきび畑の唄』の撮影現場で、僕はエキストラとして参加していた。
ほんの数秒だけ、画面に映る存在。でも今の僕にとっては、「平和」や「父親像」を深く考える、かけがえのない原点となった。


戦争を“体感”したあの日

撮影現場は、実際に使われていた防空壕。
湿度が高く、明かりを消すと目を開けているのかすらわからないほどの暗闇。岩は硬く、土は重い。そのなかで壕を掘る沈黙の演技には、言葉にできない重みがあった。

「こんな場所に、何日も何週間も人が潜んでいたのか」
そう思うだけで、背筋が凍る。絶対にこんな生活はしたくない。そう感じたのを、今でもはっきり覚えている。

さんまさんには会えなかったけど、勝地涼さんと上戸彩さんの存在感は圧倒的だった。

特に昇にぃ(勝地涼さん)の演技には心が震えた。
あのりりしい姿は、日本男児そのもの。出来上がった作品を見ながら、心の中で何度も「昇にぃ、がんばれー!」と叫んでいた。そして彼が戦死するシーンでは、本当に胸が締めつけられた。

上戸彩さんも、憧れそのままに輝いていた。
ボロボロの衣装を着ていても、まぶしいくらい美しく、優しく、現場の雰囲気を和ませてくれた。でも、そんな美しさの裏にある「戦争」というテーマが、心を重くしていた。


自衛官時代の猛暑下訓練との重なり

僕は元・陸上自衛官。
猛暑の中での戦闘訓練では、装備を背負っての匍匐前進、ゴールがどこなのか、自分がどこにいるのかわからない。
汗が目に入り、草で顔が擦れ、足はつりそうになり、喉はカラカラ。

「この地獄、いつ終わるんだ…」
そう思いながらも、心のどこかに「明日の朝には終わる」という希望があった。

でも、あの戦争に希望はあったんだろうか?
絶え間なく死と隣り合わせのなかで、彼らはどんな気持ちでいたのだろうか?

僕は自衛官時代に、歩兵、通信兵、斥候、そして部隊本部までいろんな任務を経験した。
通信兵の役割は「命令の伝達」。まさに昇にぃと同じ任務だった。

作戦の要として、仲間の命をつなぐ。
彼もきっと、日本と家族のために、その重責を黙って背負っていたんだと思う。

部隊本部では、絶え間なく届く「状況報告」に耳を傾けていた。
「敵戦車、発見」「△中隊、□□隊員負傷」「〇小隊、全滅」──その中には、親友の名前もあった。

もし、あの訓練が実戦だったら。
僕は、何度死んでいたかわからない。
そのたびに思い出すのが、あのドラマの世界だった。

『さとうきび畑の唄』は、僕にとって「平和は当たり前じゃない」と教えてくれる、心の教材だった。


父としての自分と、さんまさん演じる“幸一”

ドラマで明石家さんまさんが演じた、平山幸一。
「強くて優しい父親」って、こういう人のことを言うんだろう。

「子どもを前にしても信念を曲げない」その姿勢が、
当時は正直、ピンと来なかった。でも、今の僕ならわかる。

自衛官として、父親として、
そして今は、施設の管理職として──守る立場は変わっても、「誰かを守りたい」という気持ちはずっと同じ。

ほんの少しずつだけど、僕も幸一さんのような父親に近づけている…そう信じたい。


🎯 ライオン視点:歴史を知る=現代を生きる武器

  • 太平洋戦争、特に沖縄戦は「地上戦」という異常な現実だった
  • 「自分と家族の命が当たり前じゃない」と知ることで、今を生きる感覚が変わる
  • 実は「平和を守ること」が、一番の“戦い”なのかもしれない

🐰うさぎ視点:命の重みと家族のつながり

  • さんまさん演じる父・幸一の優しさが、静かに胸を打つ
  • 昇、美枝、春子…一人ひとりの物語がリアルに刺さる
  • 現代を生きる孫娘の視点も、感情の架け橋になっている

⚖️ バランス視点:「戦争」を“過去のもの”にしないために

  • 「戦争の記憶は、記録しないと風化する」
  • 僕の訓練体験=“生き残る”感覚を思い出させるリアルな感触
  • 今の日本の平和も、誰かの犠牲と覚悟の上にあるという事実

名言から見えるメッセージ

ドラマで何度も登場した、さんまさん演じる幸一の名セリフ。

「あんたに一番、あげる」

それは、家族や出会った人々への愛情そのものだった。
戦地に向かう長男にカメラを託すとき、
妻に想いを伝えるとき、
この一言に、父としての優しさと覚悟が詰まっていた。

他にも、

「人を殺すために生まれてきたわけじゃない」
「人は死んだらだめなんだ」

というセリフが、物語全体を優しく、でも強く包み込んでいた。


結びに:平和を祈り、敬意を込めて

あの日、画面越しに見た“さとうきび畑”の風景と、
自衛官時代に流したあの汗の記憶が、どこかで重なっていた──。

「命を守る」って、こういうことだったのかもしれない。

『さとうきび畑の唄』は、ただの反戦ドラマじゃない。
「家族」と「平和」を、あまりにリアルに、静かに突きつけてくる一本だ。

終戦記念日を前に、僕は改めて思う。
戦った先人たちに、心から敬意を。
犠牲になった方々に、深い追悼を。
今も悲しみを抱えて生きる人たちに、静かな祈りを。

そして、僕は今日も、大切な人たちのために、命を守る仕事をしている。
それが「今、僕にできる平和の形」なのかもしれない。

僕も愛する嫁っちと息子達に一番、あげる!

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